中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その6)
2023.01.16
突然、ゼロコロナ政策を転換した中国ですが、混乱が収まるかどうかは怪しい状況です。
中国政府は「死者ゼロ」という発表を続けていましたが、この発表を信じる国民はほとんどいないようで、ついに発表そのものを止めてしまいました。
こうした“いいかげんさ”の代償として、欧米のマスコミからは「1日3700万人の感染者」というような情報まで出てきて、こちらのほうが信用されかねない状況になっています。
中国政府は、こうした西側の情報に国民が触れないように、やっきとなってネット情報の消し込みを行っていますが、北朝鮮のようにネットを全面遮断するわけにはいかず、水面下では、どんどん“ヤバい”情報が広がっています。
そうした情報の一つに、若者の就職難の情報があります。
中国の2022年の大学新卒者は1076万人(この情報は確実)です。
日本は57万人ですから信じがたい数字です。
人口は、14億人vs1.2億人と11.7倍ですが、大卒者数はなんと18.9倍となります。
当然、「大学は出ても・・」という状況になり、就職率は2割にも届かないと言われています。
日本の大卒者の就職率95.8%という数字は、中国の若者から見たら羨望というしかないでしょう。
職に付けない若者も、生きていくための当座の収入は必要です。
そのため、個人タクシーの運転手やデリバリー配達員などで食いつなぐことが当たり前になっています。
そうした臨時的な職を含めても、若年層全体の失業率は20%近い数字が続いています。
若者の不満が爆発するのも当然です。
こうした状況に目を向けることもなく、中国政府はGDPの成長率5%を維持すると言っていますが、若者が希望を持てない状況で経済が活性化するはずはありません。
中国政府の公式発表は、もはや信用力を失っています。
古い成長モデルからの脱却が困難な一方で、新しい成長の原動力が見つかっていないというのが中国経済の現状です。
しかし、この経済苦境が習近平政権の瓦解につながることはなさそうです。
かつての天安門事件を思い起こしてみれば分かります。
当時のトウ小平主席は、欧米からの非難に対し、こう言い切りました。
「中国では100万人が死んでも“たいした”ことではないのです」
この言葉は真実を突いています。
現代は、国家の軍事力が強大になり過ぎ、国民の9割が政権打倒を叫んでも、軍部が反旗を翻さない限り独裁政権が倒れることはないのです。
北朝鮮やミャンマーなどを見れば、それは明白です。
独裁国家でも、経済力が衰えれば軍事力も弱くなります。
まずは、先端技術の盗用を徹底的に封じ込めるため、自由主義陣営のセキュリティの強化が必要です。
民間企業も、この強化を他人事と考えずに、経営戦略の上位に置くべきなのです。