小さな会社の大きな手(13):戦略投資の失敗から成功への転換
2016.06.16
弊社の社運を掛けた戦略投資は大失敗に終わりそうでした。
しかし、この投資が失敗で終わることは会社が潰れることを意味します。
何としても進むしかありませんでした。
しかし、「進む」ことの最大の問題は、新たな開発資金の確保です。
今回は、この話を中心に話しましょう。
この当時の一番の収益源は、ソフトウェアの受託開発でした。
しかし、パッケージソフトの開発と同時に新規受注を断っていましたから、新規はもうありません。
それでも、断り切れない注文はありました。
現金なものですが、この時は注文を下さったお客様がまさに神様のように思えました。
このように、まず現金収入が入る仕事の受注に努力し、経費圧縮に努めました。
当たり前のことばかりですが、困難な時ほど、まず確実な策を実行することです。
もちろん、この程度の稼ぎでは、とても開発資金の捻出は出来ません。
さらなる借入れは必須でした。
金融機関に日参しましたが、そうそう色よい返事が出るわけはありません。
でも絶望せずに、何度も話をするうちに、担当者もいろいろなヒントは言ってくれます。
これが大事です。
金融機関の営業(支店の営業)は「出来れば貸したい」のです。
しかし、彼らの前には3つの関門があります。
支店長決済、本店決済、そして金融庁査察です。
この全てから合格点を得られないと融資は無理です。
幸い、私の実弟が大手銀行の本店審査部に勤めていました。
ただし、私が期待したのは、その銀行からの融資ではありません。
銀行が融資を出す内部査定基準および金融庁の査察基準を知りたかったのです。
これらの情報を得た上で、弟の銀行から融資を受ければ違法性を問われます。
だから、情報だけ欲しかったのです。
この情報は貴重でした。
実際に他行から融資を受けることが出来たからです。
「情報戦を制することが何より大事」と孫子の兵法も教えていますが、身を持って実感しました。
しかし、それでも必要な金額に大きく不足していました。
でも、開発は見切り発車で継続させました。
時間を置けば、それまで開発した成果物はすぐに劣化してしまいます。
資金問題は経営者である自分の問題と腹をくくり、開発は社員の力を信じて続行しました。
結果として、最初の1億円とほぼ同額、さらに1億円の資金が必要でした。
自分の目論見の2倍でしたが、これを当然と捉えていた自分がいました。
有名な「マーフィーの法則」というものがあります。
その中に書かれていました。
「時間にしろ資金にしろ、自分が必要と思う倍はかかるものだ」
さらに書かれていました。
「だからといって、最初から倍を見積もると、その倍(つまり最初の4倍)になってしまうものだ」
とです。
この法則を「なるほど」と思っていましたから、このような事態になっても、「やはりね」と思っている自分がいました。
結果としては、これが良かったのだと思います。
このような事態に陥っても、パニクらなくて済むからです。
本はたくさん読んでおくものですね。
結局、銀行から4000万円の追加融資を引き出すことに成功しましたが、さらなる資金調達が必要でした。
いろいろな金融機関と資金交渉を続けましたが、そうはうまくいきません。
こうして、追加融資も使い切る頃、奇跡が起きました。
とある会社の社長から資金提供を受けたのです。
続きは次回に