小さな会社の大きな手(15):投資の怖さと中毒

2016.07.19

しばらく戦略投資の話を続けてきましたが、そろそろ”まとめ”に入ります。
 
一番難しい戦略投資は、新事業を起こすことであり、新商品の開発だと思います。
よく話題に上るソフトバンクの孫社長が行ってきた企業買収や多額の株式購入も戦略投資の範疇に入りますが、少し違和感があります。
あれは、戦略投資というより“博打”だと思うからです。
孫社長と交際がある、ユニクロを展開する(株)ファーストリテイリングの柳井社長もこう言っておられました。
「孫さんは、もっと事業に関心をもったほうが良いのだが・・」
 
たしかに、戦略投資と博打は紙一重かもしれません。
前述のエピソードも、あくまでもビジネスに軸足を置く柳井さんと博打に足を踏み入れた“かもしれない”孫さんの違いだと思いますので、これ以上の論評は避けます。
 
話を元に戻します。
ここまで弊社が行ってきた新事業や新商品開発の成功確率は1割ぐらい(良く見て2割?)だと自覚しています。
今のところ、稼いだカネよりつぎ込んだカネのほうが大きいです。
ですから、ここで、この先の展開を諦めれば、差し引き損失で終わります。
しかし、諦めなければ終わりは来ません。
というより、諦められない状況を作ることが成功のカギだと思うのです。
それは、「経営者自身の弱気を封じ込める」ためです。
何度も言及していますが、背水の陣こそが成功のカギだからです。
 
もっとも、メルマガで、こんな話ばかりを読まされていたら、気が滅入って仕方ないですね。
一番大事なことは、経営者がこのような状況を楽しめる性格かどうかです。
成功者と言われる経営者の方々のお話を聞く機会があると、いつもそこに注目してお話を聞いています。
そして、例外なしに、苦境というより「激動を楽しむ」気質が備わっておられることを感じます。
 
でも、気を付けるべきことは「“楽しむ”から“中毒”に移行しない」ということです。
よく耳にする言葉があります。
「倒産と離婚はクセになる」
残念というか幸いというか、私は両方とも経験がありません。
それで、両方の経験を持つ知人に、その時の心境を聞いたことがあります。
その知人は、こう言いました。
「破綻するまでは心労で限界まで追い込まれていた。でも、破綻してみたら『あっ、こんなものか』と思ったし、破綻処理が終わってみれば、何もかも失ったが、晴れ晴れとしたよ」
私には、その心境の深いところまでは分かりませんが、なんとなくは理解出来た気がしました。
私も、倒産を決意したところまでは追い込まれた時があります。
その時の心境は、案外落ち着いていました。
妻や家族からは、とてもそうは見えなかったようですが、今思い出しても、本人は、どこか”すっきり”していたように思います。
 
だが、これが「中毒現象」なんだと思います。
成功率が低い戦略投資ですが、それでも「勝ちに行く」戦略でなければなりません。
「一か八かの博打」であってはなりません。
そして、失敗を悟ったら、即時撤退して、傷を深めないことです。
「1勝9敗は良いが、10戦10敗は負け癖が付くからダメだ」
これが、戦略投資の鉄則だと思っています。