今後の建設需要(12)

2021.03.08


国土強靭化5カ年加速化対策が閣議決定されました。
2021年度から15兆円を投資するとのことですが、近年の自然災害の大きさを考えると、心もとない金額といえます。
また、コロナ禍で財政がひっ迫している地方自治体は、公共事業に予算を割く余裕が乏しいのが懸念されます。
 
国土強靭化と直接関係がない政策ですが、BIM/CIMへの前のめり姿勢も気になります。
国交省は、2023年度に公共工事でのBIM/CIMの原則適用を目指したロードマップを発表しました。
それによると、2021年度には「ダムやトンネルなどの大規模構造物の詳細設計に原則適用する」となっています。
こうした目標を掲げることに何らの異存はありませんが、気になることがあります。
 
2019年度の適用件数が2018年度を大幅に上回ったことで、2025年度目標を前倒しにしたということですが、それでも設計で254件、工事で107件です。
経験としては圧倒的に少ないことと、大手企業中心の実績数字であることが気にかかります。
まだまだ試行段階を脱していないのではないでしょうか。
 
それと、マイナス面の声がほとんど聞こえないことも懸念材料です。
もし、設計BIMの不具合で施工に問題が出た場合は、誰がどのように責任を負うのかという議論もまったく聞こえてきません。
結局、いつものように暗黙のうちに施工側が負担することになるのでないかと危惧しています。
 
システム開発費用の回収やシステムの運用コストなども大事な要素ですが、そのような数字を見ることもありません。
なにやら、カネの問題は横に置いて、とにかく進めようという空気の濃厚さを感じます。
業界紙も、すべてがバラ色になるという論調ばかりで、少々“うんざり”です。
 
その昔、私は生まれたばかりのCADの推進役でした。
頼まれて日経コンピュータの記事なども書いていました。
所属していた会社の首脳陣からの推進許可を取るため、いろいろな細工をしました。
業界には、まだLANさえ無かった時代に、電話回線を経由して遠隔でCADを操作するデモンストレーションなども行い、導入予算の獲得などをしてきました。
そのための通信ソフトなどは、すべて自前で作成していました。
仕方ないとはいえ、“ごまかし”的なデモンストレーションやプレゼンテーションも行いました。
今のBIM推進にも、似たような空気を感じます。
もちろん、推進そのものには賛成していますが、バラ色だけの風潮に、少々皮肉を言いたくなった次第です。