生産性の向上(その3)
2022.09.20
日本の労働生産性は、G7(主要7カ国)で最低と言われています。
たしかに、統計データでは米国の60%程度であり、韓国にも抜かれているという記事も見かけます。
しかし、統計データを遡って見ると、1970年以降50年以上も「G7で最低」が続いているのです。
「えっ、あのバブル時代でも最低?」と思いますよね。
その理由を、ある経済学者は「日本の労働生産性が低いのは、中小企業が多いからだ」と言っています。
「学者の言うことなんて・・」と、中小の経営者の一人としては納得がいきません。
しかし、今の政治にも期待が持てないので、自分で以下のように考えてみました。
日本は、長い間、モノづくり国家として、世界から認められてきました。
その技術力に陰りが見えますが、まだその力は健在と考えています。
トヨタの「カイゼン」は、世界中の企業がお手本にするくらいの生産性向上の教科書になっています。
「それなのに、日本は最低?」と、どうしても腑に落ちません。
それで、いろいろな本を漁って読んでみました。
その中で面白い本に行き当たりました。
米国の文化人類学者のデヴィット・グレーバーの著書で「Bullshit Jobs:A Theory」という本です。
日本では、岩波書店から2020年に出版されていますが、表題が面白いです。
『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』
なんとも人を食った書名ですが、読んでみて「なるほど」と笑ってしまいました。
“ブルシット”とは牛の糞(クソ)という意味です。
つまり、仕事の現場には無意味で無駄な労働(Bullshit Jobs)が溢れているというのです。
そう言われてみると、確かにブルシット・ジョブが多いなと思います。
しかも、そうした仕事の多くは事務仕事であり、それを行う労働者を「ホワイトカラー」と呼びます。
このホワイトカラーの行う「オフィスワーク」の生産性の悪さは、ずっと指摘され続けてきました。
学者らしくデヴィット・グレーバーは、以下のように言っています。
『1970年代に、生産性の上昇と報酬の上昇は分岐していく。つまり、報酬はおおよそ平行線をたどっているのに対し、生産性は飛躍的に上昇しているのである』
しかし、『生産性上昇から得られた利益は、1%の最富裕層、すなわち投資家、企業幹部に流れた』と言っています。
さらに、『それだけではなく、生産性上昇の実は、管理者の地位にある“無意味な事務職員の一群”を作り出すためにも投入されている』と続け、工場や現場作業で労働生産性を引き上げても、その利益は管理機構の無意味な作業に吸い取られ、結果として全体の労働生産性を下げていると結論付けています。
企業にとって営業活動は大切な仕事ですが、毎日、無駄な電話をかけ、やっと見込み客を見つけると、今度は、その会社なり家を何度も訪問して、相手が根負けすることを待つというスタイルが横行していました。
「名刺100枚置いて、ようやく営業マンの第一歩だ」などとの根性論は、今でもネット営業や電話営業に形を変えながら残っています。
これで労働生産性が上がるわけがありません。
工場や現場の努力はこうして霧散していくわけです。
こうした傾向は、特に日本で顕著といえるデータがあります。
米国ギャラップ社の調査によると、日本の会社員はたった6%の人間しか仕事に熱意を持っていないということです。
米国は31%もあり、日本は139カ国中、132位とほぼ最下位でした。
つまり、日本の会社員の大半は、毎日、「面白くねえ」「やってらんねえ」と思いながら、仕事をしているふりだけしているということになります。
ここまで読んで、管理職時代を思い出しました。
その話は次号で。
たしかに、統計データでは米国の60%程度であり、韓国にも抜かれているという記事も見かけます。
しかし、統計データを遡って見ると、1970年以降50年以上も「G7で最低」が続いているのです。
「えっ、あのバブル時代でも最低?」と思いますよね。
その理由を、ある経済学者は「日本の労働生産性が低いのは、中小企業が多いからだ」と言っています。
「学者の言うことなんて・・」と、中小の経営者の一人としては納得がいきません。
しかし、今の政治にも期待が持てないので、自分で以下のように考えてみました。
日本は、長い間、モノづくり国家として、世界から認められてきました。
その技術力に陰りが見えますが、まだその力は健在と考えています。
トヨタの「カイゼン」は、世界中の企業がお手本にするくらいの生産性向上の教科書になっています。
「それなのに、日本は最低?」と、どうしても腑に落ちません。
それで、いろいろな本を漁って読んでみました。
その中で面白い本に行き当たりました。
米国の文化人類学者のデヴィット・グレーバーの著書で「Bullshit Jobs:A Theory」という本です。
日本では、岩波書店から2020年に出版されていますが、表題が面白いです。
『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』
なんとも人を食った書名ですが、読んでみて「なるほど」と笑ってしまいました。
“ブルシット”とは牛の糞(クソ)という意味です。
つまり、仕事の現場には無意味で無駄な労働(Bullshit Jobs)が溢れているというのです。
そう言われてみると、確かにブルシット・ジョブが多いなと思います。
しかも、そうした仕事の多くは事務仕事であり、それを行う労働者を「ホワイトカラー」と呼びます。
このホワイトカラーの行う「オフィスワーク」の生産性の悪さは、ずっと指摘され続けてきました。
学者らしくデヴィット・グレーバーは、以下のように言っています。
『1970年代に、生産性の上昇と報酬の上昇は分岐していく。つまり、報酬はおおよそ平行線をたどっているのに対し、生産性は飛躍的に上昇しているのである』
しかし、『生産性上昇から得られた利益は、1%の最富裕層、すなわち投資家、企業幹部に流れた』と言っています。
さらに、『それだけではなく、生産性上昇の実は、管理者の地位にある“無意味な事務職員の一群”を作り出すためにも投入されている』と続け、工場や現場作業で労働生産性を引き上げても、その利益は管理機構の無意味な作業に吸い取られ、結果として全体の労働生産性を下げていると結論付けています。
企業にとって営業活動は大切な仕事ですが、毎日、無駄な電話をかけ、やっと見込み客を見つけると、今度は、その会社なり家を何度も訪問して、相手が根負けすることを待つというスタイルが横行していました。
「名刺100枚置いて、ようやく営業マンの第一歩だ」などとの根性論は、今でもネット営業や電話営業に形を変えながら残っています。
これで労働生産性が上がるわけがありません。
工場や現場の努力はこうして霧散していくわけです。
こうした傾向は、特に日本で顕著といえるデータがあります。
米国ギャラップ社の調査によると、日本の会社員はたった6%の人間しか仕事に熱意を持っていないということです。
米国は31%もあり、日本は139カ国中、132位とほぼ最下位でした。
つまり、日本の会社員の大半は、毎日、「面白くねえ」「やってらんねえ」と思いながら、仕事をしているふりだけしているということになります。
ここまで読んで、管理職時代を思い出しました。
その話は次号で。