企業にとっての借入金(2)

2023.07.18

無借金経営を標榜されている企業には無縁の話かもしれませんが、多くの企業にとって借金は経営の必須事項といえます。
一般の方は、借金は“怖い”ものとして住宅ローンや車ローン以外は極力避けていると思います。
もっとも、今の若い方にはそうした意識は低く、クレジット払いは当然、さらに、いろいろな借金も利用している方が多いようですが・・
 
私は、臆病な性格でしたから、サラリーマン時代は、車の購入も現金払い、クレジットは極力使わない生活スタイルでした。
自宅の購入も15年ローンという短期の借り入れでした。
起業も、そのローンが完済してからという臆病ぶりでした。
 
起業後も、建築設計の請負とシステムの受託開発という確実に代金回収ができる仕事に限定し、借金を負わない経営に徹していました。
しかし、創業1年で「こうした考えでは企業は発展しない。自社開発した商品を持たなくてはダメだ」との考えに至りました。
建築分野はハウスメーカーなどに対抗する商品開発はとても無理なので、ソフト分野の商品開発に的を絞りました。
しかし、市場に認めてもらう商品という壁は厚く、失敗の連続でした。
何度か失敗した末に、建設業向けの原価管理・財務管理のパッケージソフトの開発に踏み切りました。
当然、先行するソフト会社はあり、大手ベンダーも存在しています。
自社だけのオリジナル機能が必要と思い、当時の他社ソフトにはなかった「通信回線を経由してデータを一元管理する」というソフトを開発しました。
NEC時代のSE経験で通信回線のコントロールに強いという特色を打ち出すことにしたのです。
 
そうはいっても、こうした本格的な商品の開発には多額の資金が必要です。
その当時の現預金は3000万円ぐらいありましたが、1億円と見込んだ開発資金には不足です。
そこで初めて、銀行から8000万円の借り入れを行いました。
もちろん、自宅を担保に入れたうえ、個人保証付きという融資ですので、恐怖はありました。
創業1年目の年商は4000万円でしたが、2年目の年商は1億円になるという事業計画書と、創業まで勤めていた会社の信用が銀行の判断を後押ししてくれました。
 
だが、1年の歳月と1億円の資金をつぎ込んでも商品は完成せず、窮地に追い込まれました。
開発を諦めるか、なお時間と資金を投入して進むかを考えた末、続行を決意しました。
結局、2年の歳月と2億円をつぎ込み、ようやく商品は完成しました。
 
私が読んだ本の中に「失敗する可能性のあるものは、失敗する」という言葉などで有名な「マーフィーの法則」という本があります。
米空軍大尉で航空工学者だった「エドワード・A・マーフィー・ジュニア」の著書です。
マーフィーの原本は工学的な経験則をまとめた“真面目な”内容でしたが、後にユーモアのある「法則」としてアレンジした本がたくさん出版されました。
 
こうしたアレンジ本は、人間心理の“あや”をユーモアのある表現で言い当てていますが、そうした中に以下の法則があります。
「ものごとはすべて、最初に計画した2倍の時間と2倍の資金が掛かるものだ。だからといって、2倍を見越した計画をつくると、結果として、さらにその2倍かかってしまうものだ」
私の開発は、まさに、この指摘どおりの結果でした。
事前にこの本を読んでいたことで、さらに2倍の資金調達に踏み切れたのだと思います。
このように読書は大事ですが、いろんなジャンルの乱読が良いと思っています。
 
しかし、そうはいっても、計画の2倍の資金調達は地獄の苦しみでした。
その話は次号で・・