「責任ある積極財政」と2026年度予算案の行方(その1)
2026.03.02
民間企業においても、投資と財務規律は相反する難題です。
利益を上げる目的で行う積極投資は、短期的には財政のバランスを崩す危険があります。
ゆえに、その判断は経営トップ及び上級幹部の仕事となります。
国家予算も基本は同じで、首相が大筋の方向を指示して内閣が作成し、議会が承認となります。
その予算審議が国会で始まっています。
野党は「突然の選挙で予算審議入りが遅れた」と非難していますが、それは無理といえます。
なぜなら、来年度の政府予算(原案)はすでに発表され、各政党は目を通しているはずだからです。
それを「見ていない」と言うと、「サボっていたのですか?」となりますね。
野党は、こうした低次元の非難ではなく、原案精査の結果を基に的確な質問を行って欲しいものです。
その予算原案での一般会計歳出は122兆円と史上最大を更新していますが、前年度の116兆円から見れば、わずか6兆円(4.9%)の増額に過ぎません。
この予算原案は前石破政権による概算要求をベースにしているので、この程度になるのが通常です。
もちろん高市首相は、この予算枠組みを完全にひっくり返すことは可能でした。
しかし、それによる混乱を避けるため、前年度(2025年度)の補正予算で独自色を出すという手法に出ました。
結果として、2025年度の補正予算は18兆円を超える大型になりましたが、承認されました。
その反面、2026年度の予算原案は抑制的な内容になったため揉める要素は少なく、首相が「今年度中の成立を目指す」と言っているのも無理のない話ということです。
こうした経緯を分かっていながら、野党の「丁寧な議論を・・」の主張は、少々滑稽です。
国民民主党が、この議論に同調しないのは、こうした高市首相の意図を十分に理解しているからに他なりません。
この“やり方”は、公平に見て「なかなかに上手な手法だな」と思いますが、高市首相の策ではなく、片山さつき財務大臣の策だと思います。
片山大臣は、財務省の主計局主計官にまで上り詰めたエリート官僚だった人で、財政と金融の裏表を知り尽くした人物です。
その能力で、高市首相の掲げる「積極経済」の看板を維持しつつ、市場の信任を失わないように財務省との間で絶妙なバランスを取っています。
高市首相は、単なる積極財政ではなく“責任ある”という枕詞を付けた積極財政を掲げています。
ここが肝心なところです。
トップとしての首相は「積極財政を標榜」するが、片山氏は「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」を視野に入れ、財務省や金融市場の心配を和らげるという役目を演じています。
これが「責任ある」という枕詞の意味です。
なかなかに賢い分担で、今年の大河ドラマ「豊臣兄弟」の秀吉と秀長のような関係のように見えます。
現在の日本経済は「株高」と「円安」が同時に進行するという奇妙な状態にあります。
この状態は、一見すると矛盾しているように思えますが、二つの根にある要素は同じです。
経済評論家は、株価が高いのは『市場が“期待インフレ”を織り込んでいるから』と言っています。
どういうことかというと、高市首相が掲げる積極経済によって名目成長率が上がり、企業の売り上げも増えるだろうという期待があり、一方で、片山大臣がプライマリーバランスも重視しているというバランスへの期待(雰囲気?)が、日経平均株価を史上最高値圏へと押し上げているということです。
「なるほど」と頷けますが、円安に対して納得できる理由はほとんど見当たらず、外国観光客による「インバウンド景気にプラス」というぐらいしか言っていません
先日、米国に住む妹が短期で日本に帰国しましたが、「何もかも安くて驚いた」と言っていました。
ネット情報などで円安のことは知っていましたが、帰国しての実感はまた違ったようです。
4月中旬に米国に帰国する予定ですが、今度は「アメリカの物価、高い!」となるでしょうね。
現在の円安は、日本経済における「供給サイドの弱さ」を表す指標と考えられます。
どういうことかと言うと、政府が補助金などで需要をプッシュしても、それに応えるだけの供給能力を向上させる力が今の日本企業に不足しているということです。
原因は、労働力が不足している上に、生産性を向上させるイノベーションが決定的に足りないのです(経営力と人材力の両面とも)。
この典型的な例が農業産業なのですが、これに対する高市首相の政策は“決定的に”間違えています。
それは次号で。

