商品開発のおもしろさ(6)

2020.12.15


今回も商品としてのアニメの話をします。
私の子供時代、コミックという言葉はなく、すべて「漫画」とされていました、
当時の大人たちは「マンガなんて読んだらダメよ」とか「ろくな大人にならないぞ」と、漫画を「悪いもの」と敵視していました。
私の母も同様で、家にマンガ本を持ち込むことは許されませんでした。
それでも母の目を盗んでは漫画をむさぼり読んでいましたから、子供の好奇心は無敵ですね。
そんな「マンガ=ダメ」時代を思うと、昨今のコミック・アニメブームには隔世の感があります。
そのブームの先駆者、手塚治虫の足跡は、商品開発の大きな参考書といえます。
 
小説は、文字を読み込み、内容を把握して場面を想像するという過程を経て具体的なイメージが大脳に取り込まれていきます。
それに対しコミックは、直接、場面の画像を大脳に送り込んでいくので、早く、楽に理解が進みます。
それでもコミックは、場面と場面の間を頭の中の想像で埋めていくという「間」の作業が必要となります。
しかし、アニメは、その「間」さえ画像情報として、直接大脳に送り込んでいきます。
大脳の仕事は情報を受け取るだけとなり、圧倒的に楽に(逆に言えば、働かなく)なります。
まさに、現代や近未来のIT社会そのものを象徴している媒体といえます。
そこに着目して、アニメ風の広報に力を入れている企業が増えています。
その効果の程は不明ですが、今は、単なる「ウケ狙い」にしか見えないことが少々残念なところです。
これからの進化を見ていきたいと思います。
 
このようにアニメやコミックの効果は大きいのですが、文字情報を受けて頭の中で場面を想像していくという大脳の機能が低下していくことも確実です。
特に、発展途上の子供たちの大脳に致命的な欠陥が生じていく恐れがあります。
そうした欠陥を生まないよう、本を読む、実体験するというような、多面的多元的な経験を多く積ませることが何よりも大切です。
 
私は、電車の中では、必ず本を読んだり、ノートに考えをまとめたりというように、電子機器から離れるようにしています。
しかし、ほぼ全ての人がスマホの画面を凝視していて、本を読んでいる人は皆無状態です。
大衆が、ネットの向こう側の存在に操られていることに気が付かない、その光景に、時に背筋が凍る思いを感じます。
 
ところで、日本アニメが世界的に広がっているのにはひとつの理由があるように思います。
「鬼滅の刃」が人気になる前、「進撃の巨人」という異色コミックが人気となっていました。
他にも「鋼の錬金術師」とか「ワンピース」、「ドラゴンボール」などなど、百花繚乱のごとく、日本のコミック・アニメが世界中で評判になっています。
これらの特徴は、「鬼滅の刃」以外は、国籍不明な妙な世界ばかりが背景にあることです。
「鬼滅」にしても、日本の大正時代が背景になっていますが、よく考えれば意味不明な世界ですし、登場人物たちの髪型などは極彩色です。
日本のアニメが世界中で人気になっているヒントの一つがこの「国籍不明」ではないかと思います。
現に、中国では「ドラゴンボール」が中国製アニメと思っているファンが結構存在していたという話も聞きます。
いろいろな国の人が、自国の話に置き換えて違和感なく見ているということでしょうか。
この要素も、商品開発上の大きなヒントかなと思います。