中国の景気減速が止まらない(1)
2019.01.16
今年上半期、中国の経常収支が赤字に転落したとの発表がありました。
これは中国国家外貨管理局の正式発表ですが、それによると、2018年1~6月の経常収支は、283億ドル(約3兆1300億円)の赤字となったということです。
経常収支とは、貿易収支+サービス収支+所得収支(海外からの利子や配当)です。
つまり海外からの総合的な稼ぎ高ということです。
これが赤字になったということは、海外から稼ぐカネより海外に流出したカネのほうが多くなったというわけです。
企業の本業利益にあたる貿易収支は、2017年度で4215億ドル(約46.6兆円)ですから、大幅黒字です。
しかし、この黒字の大部分は対米黒字です。
トランプ大統領が文句を付けるのも分かります。
現在、さらなる関税が上乗せされるということで、中国での駆け込み需要が発生し、黒字幅が拡大しているといいます。
だが、この黒字幅拡大は大幅下落の前触れですから、中国当局は焦っているわけです。
「一帯一路」などの政策による海外投資は、成功すれば利息や配当となって大きな収益をもたらしますが、焦げ付くとなると、丸々大きな損失となって降りかかってきます。
「一帯一路」に日本を引き入れようと必死になっているのは、その恐れが現実となってきたからです。
開発途上国への投資は、当該国の経済力に見合った規模にするのは当然ですが、それ以上に、相当に長いスパンで計画し、フォローしていくスタンスが必要です。
しかし、今の中国政府には、こうした長期的視野に立った考えは薄く、政治的な思惑ばかりが先行しています。
日本は、今のところは「リップサービス」でとどめておいたほうが無難といえるのではないでしょうか。
さて、最後のサービス収支ですが、これが大幅な赤字となって経常収支を悪化させています。
中でも、海外旅行の増加による「旅行収支」の悪化が顕著です。
つまり、滞在先での宿泊費、交通費、食費、爆買いと言われる買い物代などです。
これは、日本で見かける光景で実感しているとおりです。
中国に限らずどこの国でも、経済が成長してくるにつれ国民生活は豊かになり、海外への旅行熱が高まってきます。
さらに、値段が高くても高品質な海外製品(特に日本製品)に対する需要が高まってきます。
高額な関税がかかる輸入品よりも海外で購入した方が安いということで、電化製品や化粧品などの爆買いが発生したわけですが、これらが経常収支の悪化をもたらしているというわけです。
この先、米中貿易摩擦によって貿易黒字が縮小していけば、経常収支の悪化が急激に進むことになりますが、当然、米国はそうした事態を狙っているわけです。
それは、やがて人民元の暴落を招きかけないということで、中国政府は危機感を募らせています。
この問題、次回は、数字でもう少し掘り下げてみようと思います。