中小企業は儲かっていない(2)

2023.02.16

帝国データバンクの2020年度の統計によれば、日本にはゾンビ企業が16.5万社あるということです。
ただ、2020年度は新型コロナが広がった1年目です。
大規模なコロナ補助金やゼロゼロ融資のおかげで、これ以降の企業倒産数は減っています。
しかし、減った分だけゾンビ企業の実数が増えていると考えることもできます。
そうだとすると、経済復興の足かせになることが懸念されます。
 
「ゾンビ企業」という言葉は、1990年代前半のバブル崩壊後の「失われた10年」の経済を分析する過程で使われ出した言葉とされています。
具体的には、数年にわたって債務の利子すら払えないという経営状態の中で、金融機関や政府などの支援によって存続し続けているような企業を指します。
国際決済銀行(BIS)では、3年以上にわたって「インタレスト・カバレッジ・レシオ(負担に対する利益の比率)」が1.0未満にある企業をゾンビ企業と定義しています。
※インタレスト・カバレッジ・レシオ=(利益+受取利息+配当金等)/(支払利息+社債利息等)
 
もっとも、新型コロナ対策のゼロゼロ融資が効いている最近のデータだと、支払利息が著しく低くなっているので、あてにはならない指標ですが・・
2023年度から徐々に正常な利払いが復活してきますが、同時に、新規融資に対する金利上昇が起きる気配が濃厚です。
こうなると、多くのゾンビ企業が事業継続を諦め、一気に倒産件数が増えるのではないでしょうか。
今後、取引に対する与信管理が重要になってくるといえます。
 
ところで、前号で「中小企業の多くは大企業の下請けや仲介的な仕事が稼ぎの中心になっています」と書きましたが、反論される方もいらっしゃるでしょう。
ある方が、「中小企業全体では大企業の下請け比率はわずか5%程度に過ぎない」と書かれ、「『大企業が札束で頬を叩き、町工場の優れた技術を盗む』というTVなどで定番のストーリーの「製造業」で限ってみても17.4%しかない」と発言されています。
 
こうした意見は、中小企業庁のデータを基にされていますので、間違いではありません。
ちなみに、「情報通信機械器具製造業」では35.9%と、かなり高い割合になっていますので、情報産業は下請比率の高い産業といえます。
また、下請ではありませんが、仲介的な事業を営んでいる企業も多く存在しています。
こうした業態も取引先の意向に対する抵抗力が弱いので、下請け企業と同様の立場に立たされている企業も多いと思われます。
 
こうした統計データを別の角度から見ていくと、また別の面が見えてきます。
会社組織ではない個人事業者の下請比率が17.4%なのに対し、従業員数301人以上の比較的大きな会社だと79.2%という高い率になります。
これも当然といえる数字です。
これだけの社員の雇用を守るためには、大口かつ安定的な顧客が必要です。
必然的に大企業を顧客に持つ構造になるわけです。
 
こうした取引関係で下請側が優位に立つためには、大企業から見て「代替が効かない大事な会社」になるしかありません。
しかし、多くの会社からは「そんなこと言ったって・・」と言われるでしょうね。
次回は、この問題を考えてみたいと思います。