企業における社長の力(7)
2019.02.18
前回の続きです。
自分なりの「ブルー・オーシャン戦略」として「競争前の競争に勝とう」で企業内の競争を勝ち抜いてきましたが、それも所詮は「コップの中の勝ち負け」であり、「井の中の蛙」だったのです。
創業してからは、そのことを思い知らされる毎日でした。
自信があった建築の技術は、大海の中では「その他大勢」としか見てもらえず、最下層の評価しかもらえませんでした。
「世の中が悪い」と嘯(うそぶ)いたところで、意味はありません。
この評価を現実と受け止めて進むしかありませんでした。
その打開の道を示してくれたのは市場でした。
「そんなこと分かっている」と言われる方が多いでしょうが、本当に分かっておられるでしょうか。
「市場に問う」とか「答えは市場にある」とか言われますが、「市場」とはあいまいな言葉の代表という認識が必要です。
あいまいなままの「市場」に攻勢を仕掛けられるのは、資金力の豊富な大企業だけです。
中小企業は、核になる一点に攻勢を集中させるしか道はありません。
そして、その核になるのは、顧客企業のキーマンに他なりません。
優れたキーマンを有する企業を市場の中から見出し、そのキーマンに接触しなければならないのです。
これが中小企業の「ブルー・オーシャン戦略」の第一歩です。
そして、そのキーマンの懐に飛び込む武器を作り磨き上げることが必須です。
その武器に必要なのは「先進性」という刃です。
つまり、先進性の追及こそが企業の命であり、「ブルー・オーシャン戦略」つまり「競争前の競争に勝つ」ための武器なのです。
ただし、こうした先進性のある武器(商品)の開発投資はバカになりません。
弊社は、年により上下がありますが、平均すると、売上げの20~30%を開発投資に投じています。
「新商品開発」の期間に入ると、この比率が40%を超えるため、経営は火の車となります。
付き合いのある経営者からは、だいたい「狂っている」と言われますが・・。
このように、私のブルー・オーシャン戦略は、両側が崖になっている山の稜線を歩くようなものといえるかもしれません。
しかも、前方は霧で見えず、一歩間違えれば奈落の底に落ちるような稜線です。
若い頃、後立山連峰の剣岳に冬季に挑んだことがあります。
頂上を目前にして、両側が深く切れ込んだ尾根に出ました。
吹雪吹きすさぶ尾根に一方足を踏み出しましたが、それ以上は進めませんでした。
そこには確実な死が待っていたからです。
あの光景は今でも網膜に焼き付き消えることがありません。
経営者になってからは、あの時の光景を見続ける毎日でした。
そして、経営の稜線を踏み外しました。
その話は、次回に。