企業における社長の力(3)

2018.10.16

電子商取引で大当たりしたアリババ・グループ・ホールディングの馬雲(ジャック・マー)会長が、引退を表明しました。
まだ54歳の若さですが、自分のビジネスモデルに「明日がない」と感じたからだと推測します。
 
米中貿易戦争の核心は「IT冷戦」とでも呼ぶべきハイテク争奪戦です。
アリババを始めとする中国系IT企業は、米国の技術を合法・非合法に利用してきたことで急成長を遂げました。
米国内に研究所を有する企業もたくさんあります。
トランプ政権が、こうした中国企業に対する締め付けを強化してくることは確実です。
つまり、中国系IT企業の明日には「暗雲が垂れ込めている」ということです。
マー会長の個人資産は数兆円とも言われています。
「もういいや、引退して、後の人生を楽しもう」と考えても無理はありません。
今後、こうしたベンチャー経営者が増えていくのではないでしょうか。
 
前回、「次回は、見極めた新たな方向に舵を切ることの難しさについて論じる」と予告しましたが、まさに、マー会長もここに直面したのでしょう。
 
新たな方向に舵を切ることに必須なのは、ビジネス環境の「自由度」です。
中国企業は、中国国内だけでなく、米国でも、その自由が失われつつあるのです。
大きな国内市場があり、多額の現金を持っている限り、倒産はないでしょうが、未来は嵐が待っています。
引退して、次の指導者に舵を任せることは賢明な判断だといえます。
 
さて、中小企業の経営者は、そんな優雅な引退はなかなか望めません。
しかし、間違いなく、日本経済は大きな曲がり角に差し掛かりつつあります。
安倍首相は、マジシャン黒田を使った金融マジックでデフレ下降をなんとか並行状態に戻すことには成功しました。
このご褒美が「総裁3選」なのですが、もうマジックは種切れになっています。
そして、次の策は・・ありません。
しかし、首相の後継者が明確になっていません。
候補といえば、石破氏、岸田氏ぐらいですが、その口から「なるほど」というような経済政策を聞いたことがありません。
巷では小泉進次郎氏を押す声がありますが、彼からも明快な経済政策を聞いたことがありません。
失礼ながら、まだ「小僧」です。大化けするまで評価はお預けです。
 
つまり、誰も「大曲りした先の日本経済」を語ってくれていないのです。
仕方ないので、中小企業の社長は、自分で予測し、自分で舵を切っていくしかありません。
そうなると大事なのは、舵を切る方向の見極め方と、舵を切るときの注意を忠実に守ることだと思います。
次回はこの話を。