これからの近未来経済(9):日本の産業構造は問題か?

2021.08.17


五輪で日本を訪れている各国の選手には、初めて来日した選手が多くいます。
SNS時代を反映して、そうした人ほどSNSへの投稿が多いようです。
景色や、シャイだが心からの歓迎を示す日本人への賛辞や驚きが多い中で、「モノが溢れる」商店の風景に驚きを隠せない投稿の多さが目を引きます。
特に、開発途上国の選手たちには、自国ではありえないほどの豊富な食品や製品であふれる量販店やスーパー、24時間欲しいものが買えるコンビニ、料理を選手村の自室にまで届けてくれるデリバリーサービスなどは、夢のような体験のようです。
さらに、鮮度が落ちれば即廃棄、売れないモノはすぐに引っ込めて品揃えを変える商売には驚愕しかないようです。
 
しかし、そのような明らかな過剰サービスやモノにあふれた豊かな社会を実現しているインフラや物流、接客の現場で働く作業員や店員、ドライバーの大半が低賃金である裏面までは分からないでしょう。
だからといって、商店や中小企業の多くが「儲かって笑いが止まらない」というわけではありません。
アパレルに代表される大衆商品に関係する中小企業は、低価格での品揃えを強いられ、最終的に大きな「過剰在庫」に苦しめられています。
従業員に報酬で報いたくとも、こうした「ムダだらけのビジネスモデル」ゆえ、それができないのです。
 
日本は30年前のバブル崩壊で成長経済が止まり、そこから成熟経済に転換しなければならなかったのですが、企業の大半は相変わらずの「売上高至上主義」から脱することからできずにいます。
売上が数兆円という巨大企業に成長しても、あいも変わらず「○ヶ年計画で、売上○割アップ」を叫ぶ企業トップの、なんと多いことか。ため息しか出ません。
中小企業のトップの中には「売上を抑えて利益重視」を掲げる方もいますが、さすがに「売上を○%落として利益率を○%上げる」というような目標を掲げる経営者にはまずお目にかかりません。
しかし、鳴り物入りの「働き方改革」の真の狙いは「働かない時間を増やし、利益を増やす」とい夢(手品かな・・)の実現です。
ならば、「売上を落とし・・」という目標設定が必要なはずです。
ところが、そうではなく「生産性の向上」を掲げる企業ばかりです。
しかし、生産性向上により商品の生産力が落ちないということは、人口減少の中では過剰生産になり、デフレが促進されることになります。
売上高を落とさない限り、この矛盾は解消されません。
 
実際、コロナ禍で、大半の人の働く時間は確実に減っているはずです。
しかし、「このままでは日本経済は落ち込みから脱することができない」という声ばかりです。
コロナ禍を「天からの恵み」と受け止め、この機に需要をはるかに上回る過剰な品ぞろえや過剰なサービスの提供を止めようという声はほとんど聞こえてきません。
結果として、「過剰供給」の負のスパイラルから抜け出せない産業構造は少しも変わらないことになります。
 
こんなことを書いていると、「おまえの会社はどうなんだ、ご立派な経営ができているのか」と言われるでしょうが、正直、言葉に詰まってしまいます。
しかし、こんな意見を書いた以上、自社で実現する具体的な戦略を描き、少しずつでも経営を変えていこうと決意しています。
次回、私が考えた「山なり多重回帰曲線型経営」なるものを解説したいと思います。