人を育てる(3):経営者自らの学ぶ姿勢が必要

2014.07.29

大手損保会社で人材育成を担当してきた友人と私のやり取りを2回に渡って紹介しました。
その最後の部分から重複してお送りします。
 
彼:大半の中小企業トップは、社員教育を理解していないんだよ。
  自分を絶対視し、自分の体験を絶対視してしまう。
  しかし、社員それぞれには、それぞれの人格、考え方がある。
  そこを見ずに、絶対視した自分をモデルにしろと強制してしまう。
  その言い方には、強引な人もいるし、優しい人もいる。
  でも、みんな同じさ。
  経営トップには「自己肯定」が必要だが、それは自分の胸の内に収めて、外に
  出すものではない。
  教育の場面では、その種の「自己肯定」を捨て、相手の胸の中に入って考えなくてはダメなんだよ。

さらに、その前の号では、以下のやり取りを紹介しました。
彼:そんなことはない。そもそも中小企業の経営者は、かなりの確率でこの3%の人材だよ。
  ただ欠点は、社内に彼ら経営者を指導・教育できる人間も組織もない。
 
私:そりゃ、そうだ。経営トップだもんな。人の指導なんて受けたくないという人ばかりだろう。

彼:だから、中小企業は必ず倒産するんだよ。遅かれ早かれね・・

 
私は、自社の事業として、多くの会社の経営や現場を指導してきました。
残念ながら、全てが成功したとは言えません。
早々と撤退したこともあります。
その経験から、失敗には共通の原因があることが分かりました。
経営トップの「人の指導なんて受けたくない」という本音が改革を邪魔するのです。

もちろん、我々がサポートする企業の多くは、危機に瀕した事態からの脱出が急務の会社です。
面と向かってこんなことを言う経営トップはいません。
また、最初は純粋に支援を要請する気持ちであることも分かります。
しかし、改革の核に突き当たる頃から、経営者特有の自我が出てくるのです。
あからさまに「この会社の経営者は私だ!」とか「社員はあんたのことを見てはいない。私のほうを見ているんだ!」と言われたこともあります。
このような言葉を聞いた場合は、仕事の遂行は諦めることにしています。
経営者に真に学ぶ姿勢が欠けている場合は、かなりの確率で、改革は失敗に終わるからです。

弊社の経営コンサル業務は「成功確率」の高い場合しか引き受けません。
「卑怯じゃないか」と言われそうですね。
たしかにそうですが、我々にも奇跡は起こせません。
無責任な引き受け方は出来ないのです。

ただし、この成功確率の判断をするのは私でもスタッフでもありません。
弊社の開発した「経営分析システム」です。
このシステムが出す「経営数値」の“しきい値”が全てです。
この“しきい値”が判断基準点を上回らない限り、仕事を引き受けないのです。

このシステムに必要データを入力するのは人間ですが、計算と判断は全てシステムです。
入力データも全て客観的な数値です。
ゆえに人為的な操作は一切入りません。

ただし、経営分析数値が“しきい値”を超えても、最後に経営者との面接があります。
最後に判断するのは、その経営者の「自らが学ぶ姿勢」です。
それが無ければ、やはり改革は失敗するからです。
ですが、最初はよくても、後に変節していく経営者が多いことも事実です。
次回は、そのあたりの経験談をお話しましょう。