2024年への展望(5):日本経済が上りきれない理由

2024.05.01


前項で、日本は「公共事業を増やし消費税率を下げれば、消費が喚起され経済が上向く」と述べました。
これは小学生レベルの算数の問題で、私ごときが大上段で言うべきことではありません。
では、どうして政府は小学生レベルの政策を実行しないのでしょうか。
 
答えは、現在の岸田政権が財務省にコントロールされているからです。
財務省は、能登復興の補正予算さえ渋って小出しの実行しか行いません。
財務省は、歳出が増える防衛費の増額や子育て支援に対しては、苦虫をかみ潰す思いでいます。
しかし、こうした大きな政治判断を変えることは財務省といえども不可能です。
それゆえ、とにかく潰せるものは潰そうと“やっき”になっているのです。
公共事業費の増加に対しては、自然災害の増加やインフラの劣化が目立つ現状を考えれば、しぶしぶ認めるでしょう。
しかし、どう減額するかの知恵(悪知恵?)を絞っています。
 
一方、歳入のほうですが、赤字企業が7割に及ぶ中小企業からは法人税が思うように取れません。
それで、大企業の利益を増やす方法で法人税収を上げようとしています。
それには消費税増税による還付金の増額が、即効性があり、経団連の狙いとも一致します。
もちろん、消費税の納付額も増えるので、財務省にとっては一石二鳥の策ということです。
「税率20%」が財務省の目標のようですが、国民はこの是非をよく考えて欲しいと思います。
 
財務省は、円安が160円を超えたことで、さすがに「まずい」と考えたのか、為替介入に踏み切ったようです。
もちろん公式には介入を認めませんが、タイミングとしてはベストに近いといえます。
実際、円はドル160.245円から154.4円に急騰したのですから「効果はあった」とみるべきです。
 
この介入とは財務省(または日銀)が保有している外貨や債券を売ることを指しますが、160.245円で売り抜けたわけなので、財務省には大きな差益が入りました(つまり、大儲け!)。
この利益は外為特会と言われる特別口座に入るわけですが、おそらく3兆円規模の臨時収入となったはずです。
ならば、この収入を使えば、一回限りの定額減税や子育て支援金の支給などは、一括の「現金支給」でできるはずです。
しかも、円安が加速したことで、この特別口座には現在40兆円もの資金が溜まっています。
これが、よく言われる「埋蔵金」の正体です。
そもそも外為特会のプラスがここまで膨らんだのは円安の影響です。
ならば、円安で打撃を受けている国民や中小企業に還元するのが筋ではないでしょうか。
 
岸田首相に本物の胆力があれば、こうした政策実行をぶち上げるでしょう。
当然、財務省に取り込まれている勢力が多い自民党内の反対を受けるでしょう。
ならば、この現状を国民に開示し、改革実行案を示したうえで、解散総選挙に打って出ればよいのです。
そして、「これが新しい資本主義だ」と叫べばよいのです。
 
しかし、岸田首相に、そこまでの胆力を期待するのは無理そうで、可能性は限りなくゼロです。
中小企業は政治に頼らず、生き抜くための“したたかな”経営戦略を考え直そうということで、本シリーズを締めます。