今後の建設需要(4):生産性は市場に評価されない(その1)

2019.12.17

私は、仕事柄、毎日業界紙を読んでいますが、「BIM」と「生産性」の単語が目につかない日はありません。
そのくらい、業界では当たり前のテーマとなっていますが、両単語とも顧客であるエンドユーザーには全く届いていない単語です。
個人顧客はもちろん、法人顧客に訊ねても、的確な解釈を聞くことはあまり無いと思われます。
 
弊社は、29年前の創業当時は、建築設計だけの会社でした。
社員3人の会社でしたが、CADを駆使し、3次元CGまで作っていました。
当時としては、非常に斬新な会社だと自負し、評価も得ていました。
ところが、CADやCGがたいしたお金にならないのです。
有効なツールもなかった時代ですから、2次元設計に比べて3次元の手間は5倍くらいに及びました。
確かに営業上の有効な道具にはなりましたが、対価に反映しないのです。
 
そうした事情は、現代でもそう変わらないようです。
「BIMで設計しました」と言っても、お客は「それで?」と言うだけです。
「大したもんだね」と言ってくれたら、涙モノです。
 
それはそうです。
お客の関心は、出来上がる建物と価格にしかないのですから。
ちゃんとしたものを作るのは「当たり前」に過ぎないのです。
そして、CAD図やCG画像は「綺麗だね」とか「おっ、いいね」で終わってしまうのです。
今のBIMも、その延長線上にあることは間違いありません。
 
そのBIMよりお客が関心を持たないのが「生産性」です。
現場代人時代、会社からは「品質、工期、安全、コストの4大管理が『お前の責任』だ」と言われ続けました。
たしかに、公共、民間を問わず、お客は品質、工期には神経を尖らし、事故を起こさないことは絶対的条件でした。
しかし、コストのことをとやかく言うお客は皆無で、せいぜい追加に対して「そんなカネない」というだけでした。
それは、そうです。
契約金額内で品質、工期を守れば文句は無いのです。
あとは、こっちがいくら儲けようが損しようが関係ないのです。
 
当然ですが、「生産性の向上」とは「コスト削減」のことであり、全面的に請負者側の世界なのです。
これが自動車や家電のような汎用品であれば、コスト削減が販売価格の低下につながり、顧客の歓迎するところとなります。
ところが、一品生産品の建設物には、その効果が見えず、顧客が関心を持ちようがないのです。
かろうじて、住宅市場では「坪○○円」といった低価格に飛びつくお客がいるので、コストダウンも意味があります。
それでも、完全に同じ住宅はないし、立地条件など様々な個別要素に左右されてしまいます。
「坪26万円」というような超低価格で売上を伸ばしたハウスメーカーもありますが、「結局は60万円になったよ」というような投稿が増えるに従って営業は苦戦していると聞きます。
 
この生産性について、次回から、もう少し掘り下げて論じたいと思います。