商品開発のおもしろさ(3)
2020.09.16
今回は、自動車の話をします。
読者のみなさまで、テスラという会社を知らない方は、ほとんどいないでしょう。
電気自動車の先駆メーカーですが、2003年創業の若い会社です。
近頃、テスラの時価総額がトヨタを超えたとの記事が出ました。
年間生産台数が、たかが36万台(2019年度)の会社が1000万台のトヨタを実質的に上回れるはずはないのですが、米国における株価は、バカ高値となっています。
過剰ともいえる未来への期待感が株価につながっているのです。
創業者のイーロン・マスクは、とてつもない変人で、彼への評価は真反対に分かれます。
私は、自分では言いにくいのですが、「常識的」な人間なので、彼の言動には付いていけません。
でも、反面「羨ましい」とも感じます。
そうした感情を抑え、商品開発という視点でテスラの業績を分析すると面白いことが分かります。
まず、既存メーカーと違い、営業はネット販売に特化することで販管費を徹底して抑え込んでいます。
その代わり、派手な話題を振りまくことでマスコミの記事となることを仕掛けています。
報道記事は無料の宣伝ですから、非常に上手いやり方です。
さらに、販売した後、オートパイロットやFSD(Full Scale Development=先行量産)のソフトウエア使用料で稼ぐというビジネスモデルになっています。
このソフトウエア使用料は、売り上げの6%ですが、粗利では25%近くになるということです。
ソフトウエアは、開発に多額な費用がかかりますが、原材料費も要らないし、物理的な工場も在庫スペースも必要ありません。
つまり、アマゾンやグーグルと同じビジネスモデルなのです、
株価が自動車メーカーの水準ではなくIT企業の水準に近づいているのも道理といえます。
新車が売れなくても、売った車が使われている間は収益が途切れないというモデルなのです。
こうした「売った後に稼ぐ」ビジネスを「ストックビジネス」といいます。
このように、ビジネスモデルとしては優れていますが、電気自動車の未来は、そう明るくはないと私は見ています。
やはり、最大のネックはバッテリーです。
急速充電のスタンドも出てきていますが、それでも30分の充電で200~250kmの走行距離です。
テスラの新型は、カタログによると、満タン充電なら600~800km走行とハイブリット車並みですが、充電時間は20~24時間です。
ガソリン補給の1~2分に対抗できなくても、5分ぐらいが待てる限界でしょう。
もちろん、劇的な性能を持つバッテリーが開発される日は来るでしょうが、それがいつかは予言すらできないのが現状です。
私は10代で免許を取って以来、今の車が15台目になります。
まだ買い換えることを考えていますが、電気自動車にはまったく魅力を感じません。
トータルで考えると、次もハイブリット車になる公算が強いです。
おそらく、生きているうちに電気自動車に乗る日は来ないと見ています。
当面、テスラの販売台数は頭打ちが続くのではと思います。
すべては、画期的なバッテリーの開発にかかっています。