商品開発のおもしろさ(9)

2021.03.16


商品というと、自動車や家電、食品や化粧品など形あるものがすぐに思い浮かびますが、サービスも商品です。
しかし、日本では「サービス=無料」と受け取られる傾向があるため、サービスを「利益を上げる商品」と考えにくい下地があります。
「あのお店のサービス、よかったね」という評価も、対価を伴わない“無償の行為”が大半です。
もちろん、その行為によってお客が“有形”の商品を購入してくれれば、間接的に利益にはなりますが・・
 
そんな中、抵抗なく対価を払うサービスのひとつが「水商売」です。
最近の言葉でいうと「接待を伴う飲食業」という商売です。
もっと噛み砕いて言えば、女性が脇に座って水割りなどを作り、どうということもない会話を楽しむというビジネスです。
これ以上、微細に書くと読者のみなさまからお叱りを受けるかもしれないので、このくらいで止めます。
 
本メルマガで何度か言及したことがありますが、私が大学に入った年に、父はそれまでの商売を止め、水商売を始めました。
しかし、父の水商売は典型的な「武士の商法」でした。
店の運営は銀座からスカウトした支配人に任せっきりで「善きに計らえ」経営でした。
当然、赤字続きになり、運転資金は3ヶ月で底をつくという有様でした。
 
父は頭を抱えて「もうダメだ」というばかりで動きません。
大学へ入ったばかりだった私は、「大学は辞めたくない」ので、母に「2人で立て直そう」と提案しました。
父以上に修羅場をくぐってきた母は、私の提案に同意しました。
しかし、私も母も水商売の経験は皆無です。
何をどうすれば良いのか、皆目見当もつきません。
そこで考えました。
「まず店の現状をこの目で確認すること、同時に水商売がどんな商売かを知ろう」とです。
 
早速、私と母は、翌日から行動を起こしました。
店を開ける前に母が酒の残量など材料をチェックし、昨日の伝票の整理と現金の照合を行い、出勤してくる従業員の時間などを記録する。
私は、大学の授業が終わった後、店に行き、皿洗いやバーテンの下働きをしながら従業員の言動やお客の観察に務めました。
 
水商売は、毎日似たような状況が続く商売です。
1周間で、商売の実態はほぼ把握できました。
従業員たちが、てんでに好き勝手にしていることもです。
接待の女性たちは、好みの客とそうでない客とを露骨に差別していました。
責任者の支配人はというと、知り合いが来店すれば“ただ酒”を飲ませていました。
ボーイに至っては、レジから現金を盗み取るという惨状です。
3ヶ月とはいえ、ここまで店がもったのが不思議なほどでした。
さて、若造の私がどうしたかは、次号で。